第23回生前贈与と相続どっちがお得?税制改正をユーチューバー税理士が解説

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聞き手・北川慧一
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 2023年度の税制改正大綱では相続財産への課税ルールが見直された。生前贈与した額を相続財産に加える対象期間が死亡前3年から7年に延び、生前贈与した額をすべて相続財産に加算する課税方式も変更された。財産を分割して生前贈与するなどの節税策にどのような影響があるのか。

 動画サイト「YouTube」で相続税を解説している円満相続税理士法人の橘慶太税理士(35)にどうすれば節税になるのか、今後の対策を聞いた。

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 今回の税制改正の最大のねらいは、生前贈与で財産を渡しても、相続で財産を渡しても最終的な税負担を同じにすることです。つまり、財産を分割した生前贈与による節税をやめさせようという趣旨が込められています。

 現在、生前贈与に関しては「暦年課税」と「相続時精算課税」の二つの課税方式から一つを選ぶことができます。「暦年課税」は1年間ごとに贈与された財産から基礎控除額の110万円を引き、累進税率をかけるというオーソドックスな方式です。他方で「相続時精算課税」は、贈与時には2500万円までが非課税となるかわりに、贈与した人が亡くなった時には、これまでの贈与を相続財産に足して相続税を計算します。これは一度選ぶと撤回できないという縛りがあり、翌年以降に行う110万円以下の少額の贈与も相続財産の加算対象とされるため、毎年の手続きが大変。何よりこの制度は暦年課税と比べて節税効果がないため、選ぶ人は少ないのです。

 政府は、将来的に暦年課税と相続時精算課税を一体化して、贈与でも相続でも最終的な税負担を完全に同じにしたいのだと思います。相続税の最大の存在意義である富の再分配機能について、財産を分割して生前贈与することによる節税をやめさせたいのではないでしょうか。

 私は多くの相談者から、「相続税と贈与税は結局どちらが安く済むのか」という質問を受けます。その答えは、少額の贈与を継続して行い、贈与税を払い続けた場合の税金が最も安く済み、2番目は贈与をせずに相続税を払う場合、3番目は超高額な贈与をした時の贈与税という順番です。なので小分けにして贈与するのが圧倒的に得で、最適な贈与額が算出できます。それも、非課税となる年110万円ではなく、財産によっては1千万円贈与をした方が断然お得っていう人たちも実はたくさんいます。現在の税制は、贈与を上手に活用できるかどうかで最終的な税負担が大きく変わる構造です。富裕層はこの性質を利用し、税負担を抑えたまま次の世代に財産を残すことが可能です。

 今回の税制改正で、相続時精算課税でも毎年110万円までの贈与が課税されなくなり、この制度を選択後も110万円以下なら申告不要で、かつ、贈与した人が亡くなった時の加算対象からも外れることになりました。

判断が難しい富裕層

 一方、暦年課税は生前贈与の…

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