第21回所得30億円超の超富裕層に課税強化 それでも不公平是正はほど遠く

女屋泰之
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 2023年度の与党税制改正大綱が16日、まとまった。

 総所得が1億円の水準を境にして、所得税の負担率が下がる「1億円の壁」問題を是正するため、新たな課税強化も盛り込まれた。給与所得のほか、株式や土地建物の売却益などを合計した所得が約30億円を超える約200~300人を対象に追加の税負担を求める。

 2025年から適用する。合計所得から3・3億円を引いた上で22・5%の税率をかけた額を算出し、これが通常の所得税額を上回った場合は差額を追加課税する。所得50億円の人では2~3%負担が増える見込み。

 給与所得の所得税率(地方税含む)は金額に応じて55%まで上がる一方、株式の売却益や配当といった金融所得の税率は一律20%と低い。このため、金融所得の割合が多い富裕層ほど税負担が軽くなり、税負担の公平性が崩れた状態になっている。

 岸田文雄首相は昨秋の自民党総裁選で「1億円の壁の打破」を掲げたが、国内外の投資家からの不評を受け、昨年の税制改正の議論では早々に議論を封印していた。今年は課税強化に踏み込んだが、ごく一部の超富裕層のみが対象で不公平の是正はほど遠い。今後もさらなる見直しが求められそうだ。(女屋泰之)

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