火災の三幸製菓工場、報知機が頻繁に誤発報 危機意識薄れ避難遅れか

有料記事

宮坂知樹
[PR]

休憩中も焼き窯に火、せんべいかすから出火か

 新潟県村上市で2月、米菓メーカー三幸製菓の工場が全焼し、従業員6人が死亡した火災で、外部有識者らでつくる同社の火災事故調査委員会が報告書をまとめた。出火原因について、休憩中も焼き窯に点火したままにしていたため上部の乾燥機が過熱したと推定。火災報知機の誤発報が相次いでいたことから警報音に対する従業員の危機意識が薄く、避難を始めるのが遅れた可能性も指摘した。

 火災は2月11日午後11時35分ごろ、荒川工場F棟の「焼き工程」で起きた。報告書によると、当時は休憩時間で、工程は止まっていた。せんべいがない状態で火が付いたままになっていた焼き窯から、上部に設置された乾燥機が熱せられ、底にたまったせんべいのかすが燃えたと考えられるとした。

 従業員が最初に火災に気づいたとき、すでに乾燥機から炎が上がっていた。約1メートル上方の天井で断熱材として使われていた発泡ウレタンに延焼。同43分ごろには天井一面に燃え広がり、大量の黒煙が発生した。停電も起きた。

 棟内には26人がいた。亡くなった社員2人は避難する十分な時間がなかったとみられ、1人は「生地乾燥工程」で、もう1人は通路で発見された。非常口そばで倒れていたパート清掃員4人は、視界がきかないなかで非常口に気づけなかったとみられる。

報知機発報しても作業「一般的な対応」

 調査委の聞き取りに、従業員のほとんどが非常口の存在を知らなかったと答えた。報告書は、停電を想定したものになっていなかった点なども含め、避難訓練の不十分さを指摘した。さらに、火災報知機が年に数回は誤って発報し、火災前月の1月には5回あったことを挙げ、発報しても作業を続けるのが「一般的な対応」になっていたとして問題視。当時もそうだったとした。

 そのうえで、消防用設備や訓練内容の見直し、1~2年に1回ほど外部から防火管理について評価を受けることなどを提言。また、県内に多くある同業の米菓メーカー各社と安全・防災に関する情報の共有を図る仕組みについても検討を続けるよう求めた。

 調査委は、委員長の松原美之・東京理科大教授を含む外部有識者3人ら計4人で構成。4~11月にかけ、従業員18人への聞き取りや現地調査を進めてきた。5月27日には1次報告を取りまとめていた。

 今回の報告を受け、佐藤元保CEO(最高経営責任者)がコメントを公表した。「このような火災事故を二度と起こさないため、原因と推測される事象および状況に関して再発防止策を策定、実行してきた」とし、「頂いた提言も踏まえ、再発防止策を継続していくための体制の強化と運営の整備を引き続き行う」と述べた。

■発泡ウレタンが延焼拡大招い…

この記事は有料記事です。残り508文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(春トクキャンペーン中)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

春トク_2カ月間無料