美浜原発の運転差し止め却下 稼働中の老朽原発 大阪地裁仮処分
運転開始から40年超の老朽原発として稼働中の関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)について、大阪地裁(井上直哉裁判長)は20日、運転の差し止めを求めた仮処分申し立てを却下する決定を出した。
仮処分は福井県、京都府、滋賀県の住民9人が申し立てていた。住民側は、周辺の活断層や敷地直下の断層によって、原発の地盤がずれる危険性がある▽老朽化に伴って重大事故が起きる可能性が高まっている▽事故時の避難場所や経路に他の原発周辺が含まれており、避難計画が複合的な災害を想定した実効性のあるものになっていない――などと主張した。
一方、申し立ての却下を求めていた関電側は、敷地直下の断層が動く可能性はなく、地盤がずれることもないと反論。老朽化による重大事故のリスクに対しては、原発内の機器は劣化するものの「人が近づいて点検できなくても、水中カメラや超音波を使って状況を把握し、必要な設備は取り換えている」として、安全性は十分に確保されていると説明した。避難計画については、複数の原発での同時事故は想定されず、法令に基づいた適切なものだとした。
また、大地震の際に想定される最大の揺れである「基準地震動」の算定が適切に行われているかも争点となった。
住民側は、計算によって出された「平均値」よりも上乗せすべきかの検討が行われていないと主張。「原発から約1キロの距離に活断層がある」として、関電の算定は不十分だと主張した。
関電側は、算定の際に検討すべき活断層は「敷地から250メートル程度の範囲内だ」として該当するものがないと反論。計算の際には、震源として想定する断層の長さや面積を大きく見積もっており、基準地震動は高めに設定されていると説明していた。(森下裕介)
美浜原発3号機とは
関西電力が1976年、福井県美浜町で運転開始。出力82・6万キロワット。東京電力の福島第一原発が事故を起こした後の2011年5月に定期検査のため停止し、21年6月に老朽原発としては事故後初めて再稼働した。その後、原発の新規制基準で設置が義務づけられたテロ対策施設の建設のため再び停止したが、今年8月30日に原子炉を起動し、9月1日に発送電を再開した。
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。