4年前のクリスマスに告げられた乳がん 治療を中断、再び授かった命

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後藤一也
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 「理系の人材が欲しい」「急に内定辞退された」「あと2人急いで採用したい」

 2018年秋、横浜市の丸橋真生(まい)さん(35)は、企業の新卒採用をサポートする人材広告会社の営業課長として、忙しい日々を送っていた。前年に長女を出産し、職場に復帰して半年ほど。中小企業からの依頼に追われ、帰宅後も風呂でタブレット端末を開いては、3人の部下が作った書類を確認した。

 そんなとき、熱が2~3日続いた。ひどく疲れていて、会社を休んだ。

 「疲れているのかな」

 ふと、春に人間ドックを受けていなかったことを思い出した。毎年欠かさず人間ドックを受けていたが、職場復帰したタイミングで、春は受けられなかった。

 2年ぶりに人間ドックへ。乳房の超音波検査を受け、左胸はすぐに終わったのに、右胸は時間がかかっていた。

 すべての検査が終わったあと、医師がこう言った。

 「この白いの、腫瘍(しゅよう)かもしれません」

 「どれくらいの大きさですか」

 「14ミリぐらいでしょうか。ただ、出産後だから授乳も影響しているのかもしれませんし、大丈夫だとは思いますが……」と紹介状を出してくれた。

 紹介状を持って、市内の病院に向かった。医師は「悪性腫瘍の可能性は50%ぐらい」と話した。組織をとるために右胸に針を刺され、痛みで涙が出た。

 クリスマスの12月25日。午前中はいつも通り仕事をして、午後に検査の結果を聞きに行った。夫(44)と一緒だった。

 夫との出会いは15年。共通の知人はいたが、SNSで夫が間違えて真生さんにコメントを送ったことがきっかけだった。初めてのデートは六本木映画「博士と彼女のセオリー」を見た後、自然と家族の話題に。お互い一人っ子。すごいまじめで、やさしい人だった。出会って10カ月でプロポーズを受けた。

「当分、妊娠は控えて…」に涙

 診察室に呼ばれ、夫と中に入ると、医師2人が真剣に何かを話していた。

 「あ、ダメだったんだ……」…

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    島康彦
    (朝日新聞ネットワーク報道本部次長)
    2022年12月24日20時55分 投稿
    【解説】

    朝日新聞の東京社会部で、小デスク(原稿係)のキャップとして記者を支えてくださった丸橋さん。いつも笑顔で、懸命に仕事する姿に「まいまい」と読んで記者みんなが慕っていました。私が医療担当のデスクになったことを知り、ぜひ自身の経験を広く伝えたい、