2度目の大戦を招いた「戦間期」と今の類似点 何に再び失敗したのか
二つの世界大戦に挟まれた「戦間期」に似るとも言われる、現代の国際情勢。政治学者の板橋拓己さんは、ウクライナ戦争は、当時と同様の「失敗」の結果と捉えることができるかもしれないと指摘します。国際社会は何に再び失敗し、どう教訓を生かしていけるのでしょうか。
いたばし・たくみ 1978年生まれ。東京大学教授。専門は国際政治史、欧州政治史。著書に「分断の克服 1989―1990」(大佛次郎論壇賞)、「アデナウアー」など。
――現在の国際情勢は、二つの世界大戦の間の「戦間期」に似ているともいわれます。
「今のロシアを、戦間期ドイツのワイマール共和国と重ねる見方は多いですね。巨大な国家が解体した後に帝国意識が残存したという点、いったん経済的に破綻(はたん)しかかったという点で共通しています。ワイマールは1920年代にハイパーインフレと大恐慌を経験し、ナチスが台頭した。ロシアも90年代に経済的に大きく混乱し、その後プーチン氏が強大な権力を握りました」
「もちろん戦間期と現代で、全体状況は大きく違います。その中で、あえて現在と似ている点を探すとすれば、大きな戦争後の『秩序構築』に失敗したことと、社会が極度に分断されていることです」
――「秩序構築の失敗」とは。
「欧州諸国が血みどろの戦い…
- 【視点】
戦間期の世界経済は、1929年に発生した世界恐慌をきっかけに激変しました。前半の欧州は大戦の戦後処理が主なテーマで、米国は新興国として空前の好景気となりました。ところが後半は国家のエゴがムキ出しになったブロック経済体制に移行します。 日本
- 【視点】
現代の国際環境を「戦間期」と似ているという出発点から議論するのは興味深い問題設定だが、今ひとつピンとこないのは、冷戦が主観的には「戦争」であり、勝ち負けがあるとしても、そのために失った人命は限られており、イデオロギー的な戦いの部分を除けば、