TSMC、米補助金の受給明言せず 背景に「踏み絵」の存在か

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ワシントン=榊原謙
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 米国のバイデン政権は人工知能(AI)や軍事兵器にも使われる半導体の国内生産を強化するため、総額520億ドル(7・1兆円)を超える企業向けの巨額補助金を新設しました。ところが、米国での増産に400億ドル(5・4兆円)を投資することを決めた台湾の半導体最大手はこの補助金を受け取るかどうか態度を示していません。背景には、企業に「踏み絵」を迫っているためとの指摘があります。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のマシュー・レイノルズ研究員に聞きました。

――半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が今月、米国での生産に巨額投資をすると発表しました。

 「(米中対立で揺れる台湾の)地政学的リスクに照らせば、TSMCが米アリゾナ州への投資を拡大することは合理的な行動といえる。米政権は、最先端の半導体生産を中国から切り離すことを最優先にしているため、TSMCの今回の投資は米政権の好感を得るだろう」

――米国内での半導体生産を増やすと同時に、台湾に集中している半導体生産を分散させたいバイデン政権にとっては、TSMCの決断は勝利ですね。

 「今回のTSMCの発表は、確かに米政権にとっては広報上の勝利ではある。だが、その意義を過大評価しないことが重要だ。アリゾナで回路線幅3ナノメートル(1ナノメートル=100万分の1ミリ)の半導体の設備が稼働する頃には、半導体の最先端は3ナノから2ナノに移行しているだろう。また、アリゾナの生産能力だけでは、中国と台湾の間で不測の事態が起きた場合のサプライチェーン(供給網)の混乱を埋め合わせるには不十分だ」

――バイデン政権は8月、半導体生産を米国で強める企業に多額の補助金を出す「CHIPS(チップス)及び科学法」を成立させました。TSMCは補助金を申請するとみられますが、いまだに動きがありません。

 「TSMCが補助金を申請す…

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