第1回仲間を殺され14歳で性奴隷に 生き別れた「ISの子」、忘れられず
「お前は奴隷だ」
8年前、14歳だったアーシィマ・ジャシムは告げられた。
周りの女性たちの話から、わかってはいた。自分もいずれ、そういう運命をたどるのだと。
「俺と一緒にいれば、年寄りの男にお前を売りはしない」
バラアと名乗る、20歳くらいの男はそう言った。どこにでもいそうな若者。ストレートの黒髪が、肩まで伸びていた。
その日、男は避妊もせず、アーシィマをレイプした。
泣き叫び、覆いかぶさる男を押し返し、逃げようとした。ただ、ただ、痛かった。
「言うことを聞かないなら、売り飛ばすぞ」。男はそう脅し、行為を続けた。失神しなかったから、今も鮮明に覚えている。
けがれてしまったと、自身に対する嫌悪感がわき上がった。浴室にあったひげそりで手首を切って死のうとしたが、止められた。
それでも男は、毎日のように強いてきた。
「相手が子どもだろうと関係ない。神をも恐れぬ男でした」
1年半、屈辱に耐えた後、別の男に売り飛ばされた。故郷から260キロ離れた、隣国の街だった。
アーシィマを悲劇が襲ったのは2014年8月。故郷で、数日間のうちに1千人以上が殺された。
約6400人の同胞が拉致され、約2700人近くが今も行方不明のまま。多くの女性がアーシィマのように「性奴隷」となった。数十ドル程度の金額で、何度も「転売」される女性もいた。
連載「ヤジディ教徒の悲劇 ISの暴虐の果て」
8年前、テロ組織の標的となった少数派の人たちがイラクにいます。わずか数日で1千人以上が虐殺され、女性や少女は「性奴隷」にされました。世界から悲劇が忘れ去られることを恐れる人々の、今も続く苦しみを報告します。記事後半にアーシィマへのインタビュー動画があります。
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