路地奥の新築やリフォームをしやすく 京都市が運用見直し

河原田慎一
[PR]

 京都の街中に数多く残る路地のたたずまいを残そうと、京都市は今年4月から、路地の奥にある家を新築したりリフォームしたりしやすくなるよう市独自の制度の運用を改めた。市中心部の不動産価格高騰で若い世代の転出が続く中、市は、路地の再生で転入者の増加につなげたいともくろむ。

 今月、世界遺産下鴨神社左京区)西側に広がる住宅街の路地に、新築の住宅が完成した。約20坪の敷地いっぱいに建てられているが、庭や縁側もあり、2階の和室からは賀茂川も望める。

 この場所には2棟続きの家があり、2019年に空き家になった。土壁が崩れ落ちるなど朽ち果てた状態だったが、路地の幅が狭く、建築基準法上、新たな建物を建てることができなかった。

 そこで、11年にこの土地を購入した不動産会社「八清」(下京区)の西村孝平会長(71)は、京都市の「連担建築物設計制度」を使って、この路地を再生するプロジェクトを始めることにした。

 この制度は、京都市が1999年に創設。これまで「再建築不可」だった路地にある建物を更新できるよう、いくつかの土地をまとまった一つの敷地とみなし、敷地内のすべての地権者が同意して協定を結ぶなどすれば、市は、建ぺい率などの規制の範囲内で可能な限り、建築を許可するようにした。ただし、その際、火災時などに避難する通路を2方向に設けるなど、安全面や防火面での対策が必要になる。

 さらに今年4月からは、この制度に基づく規制を緩和。2階建て以下の建物を建てる場合、これまで「外壁から建物までの距離を4メートル以上取る」としていた基準をなくした。路地の幅も最低2メートル以上必要だったが、路地の入り口が前の道路と2メートル以上接していれば、路地の途中で狭くなっていても、再建築を認めるようにした。

 さらに、路地の中にある町家の改修については、戸や窓などを防火設備にすることなどで、これまで認められなかった建物全体の半分を超える大規模改修も認められるようになった。

 下鴨地区の新築物件は、こうした制度を最大限活用している。西村会長は「協定などの手続きは大変だが、これまで空き家が朽ちていくだけだった路地が再生できれば、大きな付加価値を生む」と話す。

 ただ、市によると、この制度を使って路地が再生するケースは「年に1件あるかどうか」で、活用が進んでいないという。この制度が不動産業者や建築士らにあまり知られていないことや、市が規制を緩和して許可するまでの間に多くの調整や手続きが必要になるためだ。

 市内には約4万軒の町家があるとされ、その3割が路地の中にある。多くは「住むには狭い」「修理がしづらい」などの理由で空き家になり、町家自体も年間800軒ペースで減っているという。市の担当者は「路地を守るために、一定の安全性が確保できれば新築やリフォームができるよう、可能な限り規制を緩めた。特に若い世代の人には、再生された路地の新築や改修された物件も、住まいの選択肢に入れてほしい」と話す。(河原田慎一)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら