「暴力がない、地域に開かれた学校へ」 事件から10年、桜宮高校は

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宮崎亮
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 大阪市立(現・大阪府立)桜宮高校のバスケットボール部主将だった男子生徒が、顧問から暴力を受けて自殺した事件から23日で10年が経つ。暴力をなくすことと「地域に開かれた学校」を掲げてきた同校のいまを取材した。宮崎亮

 全校生徒約840人のうち4割が人間スポーツ科学科に属する桜宮高校。各運動部は全国・近畿大会での実績を重ねてきた。

 事件は2012年に発生。顧問が体罰をした背景について、大阪市教育委員会は「生徒に対する暴力を指導の一環と位置づけ、指導方法として効果的だとの考え」を持っていたと指摘した。

 事件後、同校では体罰の再発防止と、生徒の主体性を重視した改革を学校全体で進めてきた。

 全教職員が怒りの感情を抑える「アンガーマネジメント」などの研修を毎年受講。全部活動の顧問と管理職は定期的に会議を開き、現状や在り方を話し合っている。

 主将らが集って望ましいリーダー像を考える研修会も開催。全校生徒が命の大切さを伝える講義を受けている。

 さらに、「地域に開かれた学校」を意識した取り組みを続けてきた。

 生徒は府内全域から入学しているため、小中学校と比べて地元とのつながりが薄くなり、校内の様子がわかりにくいとの指摘があったためだ。

 今月中旬の土曜日の朝。同校の地元・大阪市都島区の公園沿いの川で、ボート部員らが中学生2人を指導していた。ボート部は男女とも、5人乗りで来春の全国大会出場を決めている。

 中1の男子生徒(13)は桜宮高3年の菅起人(すがたつと)さん(17)と2人乗りボートに乗った。菅さんの助言を受けながら往復2キロ余りをこぎきり、「すごくわかりやすく教えてもらいました」と笑顔を見せた。

 生徒がボートに乗るのは、この日が5回目。都島区の五つの市立中学校の生徒が参加するスポーツ体験会「桜宮スポーツクラブ」の活動だ。休日の部活動を地域に移行する実践研究の一環で、昨秋から大阪市教育委員会が始めた。設備が充実し、地域交流に力を入れる同高が協力することになった。

 バスケットボール、サッカー、バレーボール、陸上、ボートの5種目から選び、桜宮高の顧問と生徒の指導を受けられる。1人が複数種目を体験することもでき、今年度は延べ約400人の中学生が参加した。

「自分の頭で考え、助け合うこと大事に」

 高校生にとっても、得るもの…

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