招かれざる鳥は生息域拡大、絶滅危惧の県鳥は激減 関係者ら危機感
5月の早朝、高知県西部の黒潮町沖にある無人島にチャーター船で渡った。中国大陸原産のカラスの仲間「サンジャク」の目撃情報があり、専門家の調査に同行していた。
標高49メートルの島の頂上に着くと、高木の間をサンジャクが飛び交っていた。青い羽毛と長い尾羽はまるでオウムのようだ。
無人カメラを設置するため水場を探し、木につかまりながら崖を下りた。雨が降り、靴は泥だらけ。蚊に見舞われ、取材ノートにはたくさんの血痕がついた。
調査したのは、生態系トラスト協会(四万十町)の中村滝男会長ら。絶滅危惧種の高知県鳥・ヤイロチョウ(八色鳥)保護のため、寄付金で森を買い取る「ナショナルトラスト運動」を20年前から進めてきた。
しかし、近年は保護区に体長65センチほどのサンジャクが飛来し、ヤイロチョウが激減した。侵略的な外来種の出現で、「20年来の活動が水の泡になる」と危機感を募らせている。
サンジャクは1999年に愛媛県宇和島市にある県有レジャー施設から30羽余りが逃げ、繁殖して生息域を広げているとみられている。黒潮町の無人島に置いたカメラには、今年生まれた4羽が映っていた。雑食で小鳥の卵やヒナも食べるとみられている。
中村さんらは8月、愛媛、高知両県の担当者らとの会議で「有害鳥獣に指定して猟友会が捕獲できるようにしてほしい」と訴えた。しかし、行政側の反応は薄い。10月には、高知県中部の南国市の物部川でサンジャクの写真が撮影され、生息域のさらなる拡大が確認された。
サンジャクの飛来地ではメジロなど他の在来種も姿を消しているという。農作物を荒らす鹿やイノシシと同様の駆除の仕組みが必要ではないかと思う。
協会は11月、愛媛県の中村時広知事あてに質問状を送った。「危険な外来種を逃がした場合、早期に対策に取り組むことが、在来種の保護に役立つのではないでしょうか」
返事はまだ届いていない。
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蜷川記者の記事「幻の鳥・ヤイロチョウはどこへ行った 森を舞う新参者の脅威」(https://www.asahi.com/articles/ASQ5C4RXKQ54PTLC001.html)は、朝日新聞デジタルで配信中です。(蜷川大介)
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四国の記者がこの1年に書いた記事から、印象に残った出来事を振り返ります。
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