介護施設で暮らす高齢者が職員による虐待で命を落とすなど、深刻な事件が後を絶ちません。2021年度の介護職員による虐待件数は739件で過去最多となりました。自治体や介護事業者向けに虐待防止の研修をする日本虐待防止研究・研修センター代表の梶川義人さんは「虐待を招く『負のスパイラル』の構造を絶つ必要がある」と指摘します。話を聞きました。
――深刻な事件が相次いでいます。
夜、介護中に行き詰まって
事件の状況をみていると、虐待が起こりやすい構図があると思います。人目のない環境もその一つです。夜勤の時間帯は多くの施設でフロアに職員が1人になりますが、それによりケアに行き詰まった職員が虐待してしまう危険が高まります。
新型コロナウイルスの影響で、家族の面会が制限されるなど、施設の中の様子が家族や外部から見えづらい状況が続き、人目のない環境が広がっています。感染対策はもちろん入居者の命を守ることにつながっているのですが、外の目が届きづらいことでそれと正反対の虐待が増えているとしたら、見過ごせません。
虐待事件がクローズアップされますが、現場では対応に困ったとしても、暴力に走らない職員がほとんどです。一方、入居者へ怒りを感じた時に気持ちがおさえられず、力で支配しようとする職員が虐待をしてしまいます。職員が感情をコントロールできないのは、職員の育成が不十分なことも背景にあります。
人手不足は人材育成にも影響
――なぜ育成が不十分になる…
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