重国籍を認めない国籍法は「違憲」 カナダ国籍の大学教授が提訴

森下裕介 才本淳子
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 外国籍を得ると自動的に日本国籍を失う国籍法の規定は自己決定権を保障した憲法13条などに違反するとして、カナダ国籍を持つ50代女性の大学教授が国を相手取り、日本国籍を失っていないことの確認などを求めて大阪地裁に提訴した。

 教授は23日に記者会見し「日本人として生き、仕事もしている。日本国籍があると認めてほしい」と訴えた。法務省は取材に「訴状が届いていないため、コメントできない」とした。

 訴状によると、教授は東京生まれ。2007年に結婚相手と同じカナダ国籍を得て、現在は京都で暮らす。研究や学会のため、海外に行く必要があるが、「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」とする国籍法11条1項のため、日本のパスポートを得られず、出入国などで不都合があるという。

 教授側は「何人も、外国に移住し、または国籍を離脱する自由を侵されない」と定めている憲法22条を挙げ、「裏を返せば、国籍を離脱しない権利を保障している。国籍法の規定は、その趣旨に反する」と主張。日本人と外国人の間に生まれた子らは事実上、重国籍が認められているとし、法の下の平等を保障する憲法14条にも反するとした。

 また、世界の7割超の国が重国籍を認めているという国連の調査(13年時点)があるとし、「重国籍の弊害が重大視されなくなってきている」と訴えている。

 原告側代理人によると、同種訴訟はほかにも3件ある。昨年1月の東京地裁判決は、外交上の保護や、納税をめぐる混乱を避けるため、重国籍を認めない国籍法の目的は合理的だとし、同法の規定を合憲とした。

 法務省によると、外国籍を選択するなどして日本国籍を失った人は、分かっているだけで12~21年、計1万536人に上る。

 教授はこの日の記者会見で「カナダには、重国籍の友人が大勢いる。重国籍を認めないことが、グローバル化を目指す日本の社会像に合っているのか、考えてほしい」と話した。(森下裕介、才本淳子)

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