第5回核のごみのトラウマ、怒る町長「札束でひっぱたくやり方は間違いだ」
連載「原発回帰の行方」⑤
11月18日夕、帰宅ラッシュのJR大崎駅前(東京都)に並ぶ緑色のテントに人だかりがしていた。
鹿児島県南大隅町からトップセールスにきた石畑博町長(66)が、特産品のサツマイモやびわ茶をアピールしながら笑顔を見せていた。
ある質問をすると、表情を曇らせた。そして吐き捨てるように言った。
「地元の特産品が売れれば、あんなものがなくても町はやっていける」
「あんなもの」とは「核のごみ」を指す。
原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場のことだ。
処分場の「候補地」に名乗り出た自治体には、調査の初期段階で20億円の交付金が国から支払われる。
人口減や税収減に悩む地方にとっては、のどから手が出るほど欲しい。
ただ、実際に処分場になれば、深さ300メートル以上の地下施設に核のごみを埋めることになる。放射能が安全なレベルに下がるまで数万~10万年かかるとされる。
この処分場の受け入れをめぐり、南大隅町は15年ほど前から揺れ続けてきた。
原発回帰に向けて大きな課題となる「核のごみ」。かつて受け入れに揺れた町は、どうなっているのか。
2007年、当時の町長が人口減対策として誘致を検討したが、鹿児島県や住民の反対を受けて撤回した。
町長に1千万円、大混乱の町
次の町長も推進派から計1千…
- 【視点】
原発の新規建設や60年超の運転を認めることを盛り込んだ政府の基本方針案に対し、最も疑問を感じるのは、「核のごみ」の最終処分場実現の見通しがまったく不透明である点だ。 記事で紹介された鹿児島県南大隅町は、電力業界が古くに候補地の一つとしてひ