黙認されるパレスチナ占領 アッバス議長が日本に期待する役割とは

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ラマラ=高久潤
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 イスラエルでネタニヤフ新政権が発足することを受け、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長(87)が今月17日、パレスチナ自治区ラマラで朝日新聞の単独インタビューに応じた。新政権では、過激な極右政党や宗教政党の議員が主要閣僚に就任する見込みで、対パレスチナ政策はこれまで以上に強硬になるとみられている。アッバス氏は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が起きた今年、国際的な支援の重要さに注目が集まったと指摘。一方で、パレスチナの現状が黙認されることは、占領や併合という国際法違反に対する「ダブルスタンダード(二重基準)」だと訴えた。

マフムード・アッバス

Mahmoud Abbas 1935年生まれ。パレスチナ解放機構(PLO)議長だった故ヤセル・アラファト氏の側近としてPLOの要職を歴任し、93年の「オスロ合意」に至る交渉を取り仕切ったとされる。2004年、アラファト氏の死去に伴い、後継としてPLO議長に就任。05年にはパレスチナ自治政府の大統領に当選した。現在PLO議長、パレスチナ自治政府議長、PLO主流派「ファタハ」議長を務める。

 ――イスラエル史上、最も右翼だと評されるネタニヤフ政権が誕生します。どう評価しますか。

 政党間で交わした合意を見る限り、平和はもちろんのこと、これまでの(パレスチナ自治政府との)合意を守るつもりがないように見えます。閣僚のメンバーには暴力やテロリズムを肯定する人たちが含まれています。残念ながら過激派から成る政権です。

 国際社会は、このような政権に対し、(和平のためにパレスチナなどとの間で)署名された合意を守るように働きかけてほしいです。占領地への入植活動、占領地の併合を含めたイスラエルの国際法違反の行為を止めるために動いてほしい。

国際社会の「二重基準」を憂えるアッバス議長。記事の後半では、日本がパレスチナ問題の解決に向けて果たす役割についても語っています。

 ――既存のイスラム組織に加え、若者を中心とする新しい武装集団がイスラエルへの襲撃を試み、市民に犠牲者が出ています。世論調査によれば、パレスチナでは「自治政府を支持しない」と答える人が急増しています。この現実をどう受け止めますか。

■批判があるとしても、平和的…

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    三牧聖子
    (同志社大学大学院准教授=米国政治外交)
    2022年12月25日15時33分 投稿
    【視点】

    人道の普遍性や欺瞞について考えさせられる。EUのボレル外交安全保障上級代表は8月、スペイン紙のインタビューで「ウクライナとガザへの対応に関してEUは二重基準だと批判されるが、国際政治とはそういうものだ」と言い切った(El Pais紙)。