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第3回ツレはうつ、自分は発達障害 「生きる意欲」を私にくれたタカラヅカ

有料記事宝塚歌劇団

河合真美江
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 何をやってもできない子。自分を下げて、目立たないように生きるんだよ。

 漫画家の細川貂々(てんてん)さん(53)は、母親にそう言われて育った。絵のコンクールで入賞しても、ほめられたことはない。

 集団行動が苦手で、幼稚園の昼寝の時間が嫌い。「なぜみんなでお昼寝しなきゃならないの?」と思っていた。

 行進の時間は怖かった。そろって歩けず、先生に怒られた。

 漫画家になり、夫の闘病を描いた「ツレがうつになりまして。」が大ヒットしても、母親には「そんな目立つことをして」と言われた。

 どうせ私は――。何をするにも、一歩を踏み出すのが怖い。電車でひとり遠出するのも緊張した。

 自分に自信がもてなかった細川さんは宝塚歌劇に出あい、生きる力が湧いてきます。「よりどころ」について考える長期連載の第2回です。

 2005年の暮れ、編集者に「宝塚歌劇を見に行きませんか」と誘われた。「場違いなやつだと思われるのでは」と不安を感じたが、意を決して年明けに東京・有楽町の劇場に行った。席は2階の一番後ろ。ファンに囲まれず、ホッとした。

 幕が開いた。花組トップスターの春野寿美礼(すみれ)さんの登場だ。

 ああっ!

 そこだけ電気がついたように…

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