全然「クレイジー」じゃなかった選挙戦 過疎地で触れた予想外の反応

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福井万穂
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 白のワンボックスカーは赤く塗装され、ポーズを決めた自らの写真と名前が大きくプリントされている。

 クリスマスが近づき、イルミネーションで彩られた宮崎県都城市の広場に、スーパークレイジー君(本名・西本誠)氏(36)の選挙カーがやってきた。

 横に「新時代」と書いた旗がたてられた。

 宮崎県知事選の投開票まで、あと1週間。トレードマークの白い特攻服姿で、50人ほどの聴衆に向かってマイクを握る。

 「きれいごとかもしれないけど、子どもにお金を使っていく。そしたら宮崎に引っ越してくる人もいる。宮崎に帰りたくなる。それが第一歩じゃないですか」

 かつて話題を呼んだ、派手な歌やダンスはもうしない。

 「俺、演説がめちゃくちゃ下手で。すいませんね」

 そう言いながら、約40分間、子どもの医療費給食費の無償化といった子育て施策や、新型コロナ対策に関する持論を語り続けた。

 幼い子ども連れや学生らが聴き入り、演説が終わると記念撮影を求める列ができる。

 クレイジー君は一人ひとりと会話し、「期日前投票、いってね」と声をかける。通りすがりに「がんばりな」と彼の肩をたたく年配の女性もいた。

「恥かくのは嫌」と言いつつも宮崎県知事選に挑んだスーパークレイジー君氏。彼はなぜ政治家をめざし、どう戦ったのか。地方の集落まで歩き回り、「クレイジー」ではなかった17日間の選挙戦を追いました。記事後半には選挙戦の様子やインタビューをまとめた動画もあります。

東京都知事選で惨敗、それでも政治家を諦めない理由

 市内に住む北阪健真さん(21)は、人だかりの最前列で最初から最後まで、熱心に耳を傾けていた。数日前にも演説に足を運び、「すごいよかったから聞いてほしくて」と、この日は母親と妹を連れてきた。

 地元の介護施設で清掃の仕事をしている。母子家庭で育ったこともあり、子育て世帯への支援を訴えていることに共感した。

 「演説を聞くとか、ちゃんと自分で考えて投票するとか、初めてなんです。明日、クレイジー君の名前を書いてきます」とはにかんだ。

 クレイジー君に注目が集まったのは、2020年の東京都知事選に立候補したときだった。

 当時、東京・銀座のクラブで…

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    長野智子
    (キャスター・ジャーナリスト)
    2022年12月26日9時47分 投稿
    【視点】

    この記事を読まなかったら全く異なるイメージを持ち続けてしまったと思います。名前や表面的な情報で勝手に判断していた自分をかなり反省しました。開票結果を見て、約7600票とったんだと思っていたのですが、それがただのバズりではなくて、幼い頃の自ら

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    星野典久
    (朝日新聞政治部次長)
    2022年12月26日13時0分 投稿
    【視点】

    当選無効となった昨年1月の埼玉県戸田市議選、今年3月の戸田市長選のころから、スーパークレイジー君の動向に注目していました。選挙を経るたびにパフォーマンスではなく具体的な政策を訴えるようになっていたからです。 実はクレイジー君のような若い候