どんなときに皆さんは、手紙を書いたり歌を詠んだりしますか? 家族や友人のことを思う年末年始は、年賀状やメールのやりとりが増える季節です。大切な人に思いを届けるには、どうしたらいいのか。自然体の作風で人気の歌人・俵万智さんに、言葉選びのひけつを聞きました。
――最近の創作の拠点はどちらですか?
2022年9月に宮崎から仙台に移りました。宮崎には息子の学校があり、ずっと住んでいたいと思っていましたが、年齢を重ねた仙台の両親のそばにいたいと思うようになり、引っ越しました。歌はどこにいても作れますので。
――歌のテーマは、どんな風に決めていますか?
テーマを先に決めることはないんです。暮らしの中で心に引っかかることがあったら立ち止まって、今の「あっ」っていうのは何だろうって見つめてみる。心の揺れを的確に表す言葉を探し始めるっていう、本当にシンプルな作り方です。
――どれくらい時間をかけますか?
1首1首違うんですが、すぐにできるわけではなくて、いくつかの要素が重なってできることがありますね。たとえば、仙台ではイチョウや紅葉がすごくきれいなんです。タクシーに乗ったら運転手さんが、「日が当たっている葉っぱから先に色づくんですよ」と教えてくれて、葉っぱにも「順番」があるんだなって気づく。一方で、いま私は子供の世話から両親の世話にシフトしているので、人生の「順番」っていうことも感じている。二つが結びついて、こんな歌が生まれました。
人生の予習復習 親といて子といて順に色づく紅葉
子育ては人生の復習みたいで、親をみるのは予習だなって思うんです。
――新しい土地に行くとアイデアが湧くことも?
観光で行っただけでは難しいけど、そこに自分が住んでいたことがあったり、懐かしい人に会ったりすると、歌になりますね。むかし住んでいた石垣島を最近訪ねたんですけど、島が明らかに心を揺らしてくれて、あっという間に15首くらいできました。
――感性を研ぎ澄ませておくために気をつけていることはありますか?
それは、まさに歌を作ることですね。歌を作ってなかったら、通り過ぎちゃう。作り続けることが一番の感性のトレーニングじゃないかなと思います。フッと思ったときに、いつでも立ち止まれる自分でいるっていうことですね。寝起きのボーッとした頭でも、浮かんでくる言葉があります。
――寝起きの布団の中で、ですか?
そうそう。私はそれが一番多…