第1回物件情報を提供しない「さかさま不動産」 貸すか貸さないかは夢次第
さかさま不動産のウェブサイトには、物件情報はない。
「気軽に演劇ができる小さな劇場」
「保護猫がいるシェアハウス」
「やばいアートなコインランドリー」
代わって載っているのは、物件を探す人とその「かなえたい夢」だ。
どんな人が、どんな考えで、どんな物件を借りたいか。借り手の「想い」が写真付きで公開されている。
借り手の自己紹介を見た大家に、自分の物件を貸したい人を選んでもらう。不動産の借り手が貸し手を募る逆転の発想だ。
さかさま不動産はマッチングまでを担い、契約はそれぞれでする仕組み。
古民家のリノベーションやイベント企画などを手がける2019年3月創業のベンチャー企業「On―Co(オンコ)」(三重県桑名市)が始めたサービスだ。
これまでに150人以上の「かなえたい夢」をウェブサイトで公開し、すでに15人ほどの「夢」をかなえた。その地域は愛知、三重、奈良、京都に及び、思いもよらない場所で挑戦を始めた人もいる。
連載「解決!さかさま不動産」
物件の魅力をアピールし、借り手を募る。不動産賃貸ビジネスではふつうのやり方です。これを180度ひっくり返したサービスを展開する若者たちは自らをこう呼んでいます。「さかさま不動産」。創業への物語を紹介します。
創業者で、ともに共同代表の水谷岳史(たけふみ)さん(34)と藤田恭兵さん(30)が、JR名古屋駅そばで手がけたシェアハウスが原点だ。
不動産市場に出てこないような古い空き家を見つけては、足を運んで大家に交渉し、自分たちの手で改装した。壊すのを待つだけだった物件が若者でにぎわい出し、「うちの物件も借りてほしい」と声がかかるようになった。大切にしてきたのは、大家と顔が見える関係を築くこと。家賃を払いに行き、雑談する。手がける物件が8軒まで増えたころ、埋もれた空き家と、夢をかなえる場所とをつなぐアイデアが生まれた。
ユニークな発想は、でこぼこな2人の人生に深く根ざしている。
「不動産」名乗るけど、仲介料とらない
水谷さんは工業高校で電子工…