沖縄返還交渉で佐藤栄作首相の密使を務めた国際政治学者、若泉敬氏の過去を物語る数々の史料が見つかった。返還後の沖縄に米国が緊急時に核兵器を再び持ち込むことを認める密約を首脳会談で交わすシナリオなどの史料を、若泉氏ゆかりの人々や専門家と読み解き、人物像に迫る。
1969年11月の日米首脳会談に際し、佐藤栄作首相(1901~75)向けに作られたシナリオは、ニクソン大統領(1913~94)と交わす核密約をめぐる運びが周到に記され、保秘も徹底していた。ただ、外交当局を入れない「密使外交」の限界も浮かぶ。
佐藤首相の密使としてキッシンジャー大統領補佐官(99)と極秘に交渉した、若泉敬・京都産業大教授(当時、1930~96)の直筆とみられるシナリオは、9枚が残っていた。
沖縄返還後に米軍の核をどう扱うかについて、首脳会談後の共同声明での表現を決める段取りが2枚近くあり、緊急時の核再持ち込みに関する密約を結ぶ運びが1枚分続く。残りの大半は、当時の日米貿易摩擦の焦点だった繊維問題でも密約を結ぼうとした内容に費やされている。
核問題のシナリオでは、共同…
- 【視点】
日本政府が長く存在を認めてこなかった「沖縄核密約」について、これでもかと追い討ちをかけるように事実承認を迫る若泉氏直筆のシナリオの登場。正月明け早々、このニュースに釘付けになった。天皇メッセージと合わせ、佐藤栄作総理が米大統領と結んだこの核