第7回京都・南座の支配人は山伏でもある コロナ禍の逆境「動じない心」で
関西の歌舞伎公演の拠点の一つ、京都・南座は日本最古の歴史を持つ劇場だ。その支配人、小林雄次郎さん(50)は山伏でもある。山に入って祈り、生かされていることに感謝する。修験道が心のよりどころになっていたから、コロナ禍も「動じない心」で悠然と構えられた。
2022年11月末、京都・一乗寺の波切(なみきり)不動尊。山のふもとの境内で護摩(ごま)が焚(た)かれた。麻の衣に袈裟(けさ)をかけた約20人の山伏が列を組み、その先頭で小林さんがほら貝を吹いた。ヒバの葉を高く積んだ護摩壇に火がつくと、数珠を手に般若心経や真言を唱えた。
「山伏が一生懸命に祈り、みなさんの煩悩や悩みを焼き尽くす。清浄な心持ちになれます」
神奈川県で生まれ育った小林さんは京都の大学で山に魅せられた。「ちょっとやせたいな」と登山サークルに入ったことがきっかけだ。国内だけでなく、アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロや南米大陸最高峰のアコンカグアも登った。
卒業後、松竹に入り、南座や大阪松竹座で歌舞伎の公演などを担当した。仕事に結婚、子育てで山と疎遠になったが、40代になると山への思いが再燃した。日本では古来、山に神が宿ると信じられてきた。その信仰に仏教や神道を取り入れた修験道に関心が向いた。
まずは富士山だった。歴史好…