第44回戦時中に寂聴さんとすれ違い 徳島の航空隊に任官した千玄室さん

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岡田匠
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千玄室さんに聞く①

 茶道裏千家の前家元、千玄室(げんしつ)さん(99)は瀬戸内寂聴さんと半世紀にわたり、交流してきた。会うたびに「私のほうが一つ年上のお姉さんよ」と言われ、笑い合ったそうだ。2021年11月9日に99歳で亡くなった寂聴さんの思い出を聞きに裏千家今日庵(こんにちあん)(京都市上京区)を訪ねた。

 ――寂聴さんと知り合ったのは、いつでしょうか。

 『宮本武蔵』や『新・平家物語』を書かれた吉川英治先生ご夫妻が父(14代家元)のお茶の弟子で、私たち夫婦の仲人です。「おもしろい人を紹介しよう」と連れてこられたのが、大阪府八尾市のお寺の住職になっていた今(こん)東光(とうこう)先生です。「千利休の娘の小説を書きたいと言っているので教えてあげて」と吉川先生に頼まれました。

 今先生は1957年、利休の娘のお吟(ぎん)とキリシタン大名の高山右近の恋愛を描いた『お吟さま』で直木賞に選ばれました。何年かして、今先生が裏千家に寂聴さんを連れて来られたのです。

 ――寂聴さんは今さんに弟子入りし、73年11月14日、岩手・中尊寺で得度しました。51歳のときです。

 そのころ、今先生が「今度、弟子になった瀬戸内さんや。作家でもあり、仏教の勉強をしたいと言っとる」と紹介してくれました。最初の印象は、ちょっと珍しいお方だなあと。多くの尼さんを見ていますが、みんな人生に対する問題を抱えている感じがします。でも、寂聴さんは違う。非常に明るかった。

寂聴さんが出家し、いよいよ千玄室さんは初めて会うことになります。その後の交流について、記事の後半で語られます。

 「寂聴さんは、どうして弟子…

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