第1回29歳すし職人、海外で夢見る普通の暮らし 時給2倍以上に託す希望
榧場勇太
冬の札幌市の夜は氷点下に冷え込む。でも、市中心部にあるすし店は寒さとは無縁のにぎわいだ。
北海道産のウニやホタテ、アワビを目当てに観光客や家族連れでいつも満席だ。
元歯科衛生士の女性(29)がこの店でアルバイトを始めて1カ月がたつ。
週4日、午前10時から午後6時まで働く。仕込みを手伝い、ランチタイムにはすしを握る。女性のすし職人は珍しいね、と声をかけられる。
次々に注文が入り、休憩時間以外はほぼ立ちっぱなし。高校時代に運動部で鍛えた体力で乗り切っている。時給は約950円、月給にすると10万円ほどだ。
「人手が足りない」と同僚が漏らす。
「もっと雇えば良いのに」と思うけれど、口には出せない。
求人を出しても集まらないのか。人件費を抑えるためなのか。
本当の理由はわからない。
でも、たしかなことはアルバイト代だけでは、一人暮らしはできないことだ。
店には市内の実家から通う。今年中に店を辞めると決めている。
アルバイト代だけでは一人暮らしはできない…そう思った女性は、海外ですし職人を目指すことを決意します。 23歳の頃に海外で見た光景に「希望を見いだした」女性の思いと奮闘に迫ります
「30代で実現したい夢があ…