第7回大手を飛び出し、時代先取りの33歳 「なりたい自分」なったけど

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笹川翔平
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 やりたいことが見つからないまま社会人になった。

 10年のうちに、3回転職した。「安定」をなげうった先に見えてきた景色がある。

 東京都板橋区で暮らす33歳。

 京大大学院で金属材料を研究した。「社会貢献ができそう」という理由で大手の重工業メーカーに入った。

 配属されたのは火力発電所の設備を作る兵庫県内の工場。生産効率を上げるため新しい工法を検討したり、工法の変更に必要な試験を担ったりした。「社会インフラを支えている」という手応えがあった。

 ただ、何かを変えることに慎重な社風には、物足りなさも感じていた。

 入社して4、5年が経ったころ、職場でのふとした会話から「データサイエンス」という言葉を耳にした。

 これまでITとは無縁だった。でも、人工知能(AI)や機械学習、そんな未知の言葉が不思議と頭に残った。

 エクセルを使って集計していたデータを、ためしに、AIの開発に使うプログラミング言語の「パイソン」で処理してみた。新しい技術で何か新しいものを生み出したい。そんな思いで手を動かした。

 上司の反応は冷ややかだった。

 「いつものエクセルでやったほうが速いんやから、エクセルでやらんかい」

 有無を言わさぬ口調だった。

「安定」捨てる決心 背中押した妻の言葉

 そういうことじゃないのに……。

 自分がやりたいことって、今の仕事なんだろうか?

 疑問は、いつしか頭の中を占拠するようになった。

 父親は一つの会社で勤め上げ…

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    磯野真穂
    (人類学者=文化人類学・医療人類学)
    2023年1月7日7時47分 投稿
    【視点】

    アップデートという言葉があります。 最近この言葉はソフトウェアだけではなく、人間にも使われるようになりました。時代の潮流に合わせ自分をアップデートする必要があるというわけです。これ以外にも、チャージ、メンテナンス、再起動、などたくさん