アベノミクス10年、たどり着いたガラパゴス 人への投資なき低成長
北川慧一
「アベノミクス」を掲げた第2次安倍政権の発足から10年が過ぎた。足元で円安を背景に企業は好業績を享受しているが、賃金の伸びは鈍いまま。生産性も上がらず、岸田政権のもとでも低成長から抜け出せていない。数字から読み解くと、こんな日本経済の姿が浮かんでくる。
安倍晋三元首相が「アベノミクス」を掲げて政権に復帰したのは2012年末。大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の「3本の矢」で経済再生をめざした。
あれから10年。目に見えた成果といえば株価になる。発足時の日経平均株価は1万230円だったが、19日の終値は2万6405円。3万円を突破した21年には届かないものの、それでも10年前の2・5倍以上だ。ただ、日銀による上場投資信託(ETF)の買い入れが続き、官製相場の色彩は強まった。
超円高に悩まされた為替も一変した。日銀の金融緩和による影響が大きく、発足時の85円台から22年には一時1ドル=150円台に下落した。
財務省が昨年12月に発表した22年7~9月期の法人企業統計では、円安を背景に経常利益が19兆8千億円と、10年前より9割伸び、過去最高を更新。昨年11月の有効求人倍率も1・35倍で、12年12月の0・83倍から回復した。
ところが、企業は利益が増え…