オリックス・バファローズの田嶋大樹(26)にとって、2022年は特別なシーズンになった。
5年目でキャリアハイとなる9勝(3敗)を挙げ、防御率は2・66。12月8日の契約更改では「3年間、先発ローテーションを守れたことを評価してもらえた」と明かし、年俸は1億円を超えたという。
記者は今季から初めてオリックスを担当したが、田嶋の言葉にひかれることが多かった。
特にヒーローインタビューでは、ファンに対する思いを包み隠さず伝える。
「温かい声援、温かい言葉に本当に心が癒やされて、ゆとりが持てている」
「(ファンが)何かひとつでも元気というか、一歩踏み出せる力とか(を感じられるように)、そんな野球をしていきたい」
「ファンの方々の応援のおかげで投げられます」
何もおかしなセリフではないのだが、印象に残ってしまうのは、普段の田嶋の姿からは結びつきづらいからだ。
この左腕はマウンドでもグラウンドでも、ポーカーフェースでいる。
打たれた時も抑えた時も感情の大きな起伏が見られず、クールなイメージが強い投手だった。
そういう選手が、恥ずかしげもなく、粋なセリフを口にする。そこにギャップを感じていた。
だからこそ、田嶋に聞いた。
なぜ感謝の言葉をあえて口に出すんですか、と。
田嶋本人は私の質問にきょとんとしていた。
「一般的には、(自分は)思ったことを口に出さないという感じですか」と言い、ふふっと笑った。
失礼だとは思いながらも素直に、いつものイメージとは異なっている、と伝えた。
すると、田嶋はまた笑った。
「そうですよね。基本的に、テンションが低いので。でも、僕は情熱は結構ある方だと思います。筋が通っていないと嫌なことも多いんです」
さらに問い続けると、こう答えた。
「僕がそうやってファンへの…