連載「それでも、あなたを」インド・パキスタン編①
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国家間の衝突、権力による抑圧、偏見や差別……様々な苦難を生き抜く中で出会い、また、絆を深めていく2人がいます。戦乱と分断の影が色濃くなった世界にも、確かに息づく愛の物語。それらをつむぎ、背後にある国際問題のリアルを伝えます。
手がかじかむほど寒い朝だった。だが、結婚式の会場は、着飾る200人近い人の歌や踊りで熱を帯びていた。
2015年の12月、祝福を受ける兄夫婦を見て、28歳だった妹のシュマイラは願った。
いつかは、自分も。
遠戚にあたる29歳のカマルは、その結婚式の様子を、120キロ離れた場所から、SNSのビデオ電話を通じて見ていた。
後日、カマルの元に式の集合写真が送られてきた。そこにシュマイラが写っていた。
目が大きく、少し幼く見える顔立ち。
一目ぼれした。
胸の鼓動が抑えられず、すぐに行動に移した。両親を通じてシュマイラの連絡先を教えてもらい、何度も電話をかけた。
積極的過ぎると思われないように、優しい語り口の気軽な会話の中に挟んで、聞いた。
「結婚しているの?」
していない。
「婚約者はいるの?」
いない。
舞い上がった。
自分で立ち上げた車販売の仕事が忙しくて、婚期を逃したのではないかと思っていた。奇跡とさえ感じたこの機会、逃したくない。
カマルの父親のオム(66)はこの時、積極的な息子の様子に驚いた。
同時に、心配が募った。
「鉄の壁」を超えて結婚するなんて、できるのだろうか。
東京と静岡ほどの距離なのに
子どもたちは、歴史上の話だ…