第14回「鉄の壁」の先、一目ぼれの彼女 電話でしか会えなくても僕は決めた

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ジャランダル〈インド北部パンジャブ州〉=石原孝
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連載「それでも、あなたを」インド・パキスタン編①

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国家間の衝突、権力による抑圧、偏見や差別……様々な苦難を生き抜く中で出会い、また、絆を深めていく2人がいます。戦乱と分断の影が色濃くなった世界にも、確かに息づく愛の物語。それらをつむぎ、背後にある国際問題のリアルを伝えます。

 手がかじかむほど寒い朝だった。だが、結婚式の会場は、着飾る200人近い人の歌や踊りで熱を帯びていた。

 2015年の12月、祝福を受ける兄夫婦を見て、28歳だった妹のシュマイラは願った。

 いつかは、自分も。

 遠戚にあたる29歳のカマルは、その結婚式の様子を、120キロ離れた場所から、SNSのビデオ電話を通じて見ていた。

 後日、カマルの元に式の集合写真が送られてきた。そこにシュマイラが写っていた。

 目が大きく、少し幼く見える顔立ち。

 一目ぼれした。

 胸の鼓動が抑えられず、すぐに行動に移した。両親を通じてシュマイラの連絡先を教えてもらい、何度も電話をかけた。

 積極的過ぎると思われないように、優しい語り口の気軽な会話の中に挟んで、聞いた。

 「結婚しているの?」

 していない。

 「婚約者はいるの?」

 いない。

 舞い上がった。

 自分で立ち上げた車販売の仕事が忙しくて、婚期を逃したのではないかと思っていた。奇跡とさえ感じたこの機会、逃したくない。

 カマルの父親のオム(66)はこの時、積極的な息子の様子に驚いた。

 同時に、心配が募った。

 「鉄の壁」を超えて結婚するなんて、できるのだろうか。

東京と静岡ほどの距離なのに

 子どもたちは、歴史上の話だ…

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連載 それでも、あなたを 愛は生きる力に 2022-23(全27回)

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