農林水産省が実施する5年に1度の統計の調査方法について、同省の有識者会議が紛糾している。一部の調査を廃止する農水省の方針に有識者が反発。調査を継続する代案が示されたが、折り合いはついていない。専門家は国の統計全体に共通する問題点を指摘する。
「農業集落調査は多様なミクロデータの扇の要だ」
2022年11月9日、戸石七生・東大准教授らが農水省を訪れ、調査継続を求める全国の研究者ら1131人分の署名を藤木真也政務官に手渡した。呼びかけ人の40人には、農業関係だけでなく歴史学や社会学、経済学など幅広い分野の研究者らが名を連ねる。日本社会学会など計13学会1団体も、調査継続を求める声明やアピール文を発表した。
農業集落調査は5年に1度、農水省が全国の農林漁業の実態を調べる「農林業センサス」の一部。約14万集落を対象に「寄り合い」の回数や議題を調べる。政府統計でも特に重要な基幹統計に位置づけられる。
「唐突」な廃止方針
農水省は次回の25年のセンサスに向け、22年7月から有識者会議で調査方法などを議論してきた。調査の廃止方針を明らかにしたのはその初会合。ある委員は「事前の相談はなく唐突だった」と明かす。
なぜ廃止なのか…

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