夢を奪ったあの日のクーデター 異郷の「悟り寺」で祖国へ捧げる祈り

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大滝哲彰
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 2年前の2月1日、国軍がクーデターで実権を握ったミャンマーは、国民の約9割が仏教を信仰する国だ。故郷を離れて暮らす同胞のために、日本でも各地にミャンマー寺院が建っている。彼らが捧げる祈りから、国民にとっての政治と宗教の関係を考える。

 「悟り寺」と呼ばれる寺院が、埼玉県東松山市にある。ここに暮らすミャンマー人の住職のもとに、毎日多くの若いミャンマー人が訪れる。

 ティリ・ティサーさん(31)が両の手を合わせて祈っていた。

 「望むのは平和の回復、それだけです。拘束されている人や避難民となった母国の人のために祈りを捧げています」

 2021年2月、国軍がクーデターで実権を握って以降、市民による命がけの民主化運動が続いている。

 刃向かう市民を弾圧する国軍と、国軍に抵抗する民主派の戦闘が長引き、政変後の国内避難民は110万人にのぼっている。多くの死者も出た。

 ティサーさんの故郷で最大都市ヤンゴンは、軍事政権に対する抗議デモが激しかった場所だ。

日本の学びを母国のために

 来日して10年。日本の大学を出て、今は金融業で働いている。

 経済的に発展した日本での学びを、母国のために生かすことが夢だった。

 だが、その夢はクーデターに…

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