政府は脱炭素政策の資金を集めるため、新しい種類の国債を発行する方向で調整に入った。集めた資金の使い道を脱炭素事業に絞った国債とする。主に再エネ投資に使途を限定している欧州のグリーン(環境)国債と違い、日本は基準を緩めて二酸化炭素(CO2)の排出量を抑えた火力発電や原発関連も対象とする。移行国債と呼ばれ、実現すれば初となるが、世界の潮流からは外れる。
国債には、道路や橋などに使われる建設国債や歳入の不足を補う赤字国債、東日本大震災対応の復興債などがあるが、市場では同じ商品の「国債」として発行されており、買い手には区別がない。
一方で移行国債は、国際機関での認証を得て、投資家がこれらと区別できるようにする。財務省は機関投資家らへの聞き取りで、外部評価を得るSDGs(持続可能な開発目標)国債の一形態としての発行に一定の需要があると判断。脱炭素社会への段階的な移行を後押しすることを投資家にアピールし、通常の国債より低い金利で出すねらいがある。財政負担の軽減にもつながる可能性がある。
経済産業省や金融庁と連携し、早ければ今年秋の発行を目指す。発行するのは10年債や20年債など比較的長期の国債とし、来年度は1・6兆円、今後10年で計20兆円を発行する方針だ。
返済財源にはCO2の排出に課金して削減を促す「カーボンプライシング(炭素課金)」を導入。化石燃料の輸入業者への「賦課金」と、電力会社に有償でCO2の排出枠を買い取らせる「排出量取引」を組み合わせる。
G7で環境国債を発行していないのは日米だけ
もっとも主要7カ国(G7)…
- 【視点】
環境(グリーン)国債は、一般的な国債とは異なった観点で発行されます。脱炭素への投資は、その性質上、すぐに大きな利益を生むことはできませんが、極めて重要な投資であり、長期的には将来の成長を担保する資金と捉えることができます。このため、他の国債
- 【視点】
SDGsに求められているのは持続可能な社会への変革(トランスフォーメーション)であって、移行(トランジション)はあくまでそこに至るプロセスとして考え得るものです。考え「得る」もの、というのは、移行せずに、一気に変革に至ることなども、スター

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