浜松・人権条例案、「取り組み継続を」と市長 当事者は「過程大事」
大平要
【静岡】浜松市の鈴木康友市長は31日の定例会見で、在任中の議案提出を断念した人権条例案について、「人権に関わる重要な条例なので、ぜひ次の市長にも継続して取り組んでいただきたい」と述べた。
市は2021年11月、「人権を尊重し多様性を認め合う差別のない社会づくり推進条例案」を公表し、市民意見(パブリックコメント)を募った。当初は、22年4月の施行を目指していたが、関係団体から内容や進め方についての疑問が噴出。担当部署が、修正作業を進めることになった。
鈴木市長は「2月議会に上程したかったが、残念ながら任期中の成立は難しくなった。文言のひとつひとつの扱いをめぐって、(当事者には)非常にセンシティブ(敏感)な思いがある。思想としては理解いただいているが、強引に進めることはできない」と述べた。
条例案は、国籍や性別、障がいの有無などの多様性を尊重し合い「不当な差別的扱いを禁じる」と明記した。罰則などは設けない「理念条例」で、市が取り組む具体的な施策の基本になるという。
だが、条例案が公表された段階では、差別被害を受ける当事者や支援者らの意見を聴いていなかった。
条例案の公表後に市の担当者と話をした浜松TG(トランスジェンダー)研究会代表の鈴木げんさんは、「みんなで考えようという気持ちが足りなかったのではないか。多様性をうたう条例であれば、つくっていくプロセス(過程)が大事だ。いろんな市民が関わり、お互いの理解を深めていく。市長が代わっても、やらなければいけない」と話す。(大平要)
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