連載「心のとなりで」は、これまで3回にわたり阪神・淡路大震災で大切な人を亡くした3人の28年をたどった。続く2回では、心の傷を負った当事者と彼らを支える人、それぞれの立場になった時、私たちはどうしたらいいのかを専門家とともに探る。
今回は災害臨床心理学が専門の兵庫教育大学の冨永良喜名誉教授に話を聴いた。
冨永良喜・兵庫教育大名誉教授(災害臨床心理学)
日本では阪神・淡路大震災をきっかけに「心のケア」という言葉が一般に広まりました。ただ、「ケア」という言葉は弱者に対する世話や配慮というイメージを抱かせ、当時の被災者が積極的に相談窓口へ支援を求めることはありませんでした。
人間の心には自然に治癒する力が備わっています。心のケアの本質は、「本人が主体的に回復の道を歩んでいくのをサポートすること」です。
回復を左右するのは、心の中に閉じ込めた被災体験を何らかの形で表現できるかどうか、避け続けずに自分のペースで向き合えるかにかかっています。このメカニズムがもっと知られてほしいと思います。
例えばつらい体験を徐々に人に語ったり文章にしたりできるようになると、心の中が整理され、その出来事と距離をとって向き合うことができるようになります。他者と気持ちを分かち合ったり、自責感などのマイナスの考えを変えたりもでき、トラウマ反応の軽減につながることが分かっています。
逆に何らかの要因でそうした…
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