中国の習近平(シーチンピン)指導部が「ゼロコロナ」政策の大幅緩和に踏み切って7日で1カ月となる。徹底した検査や隔離が撤廃され、日常生活を取り戻す人がいる一方で、実態すらつかめない感染爆発で多くの人命が失われ続けている。決断は、光をのみ込むほどに暗い影も伴っている。
緩和で感染爆発 「原因はゼロコロナ」指摘も
「ゼロコロナ」の緩和以来、初の3連休となった元日、北京最大のチベット仏教寺院「雍和宮」には外にまで参拝客の数百メートルの行列が延びていた。マスクこそ着けているが、歩道はぎゅうぎゅう詰めの密集だ。もはや社会的距離を気にするそぶりはみえない。
中国政府が「新10条」と呼ばれる緩和措置を発表したのは先月7日だった。それまで施設隔離が必須だった感染者に自宅隔離を認め、ほとんどの場所でPCR検査の陰性証明の提示も不要とした。
ゼロコロナの防波堤が崩れ、すぐに爆発的な感染が襲った。中国政府は感染者数全体の公表をやめているが、人口約2200万人の北京では、年末までに「感染率は80%を超えた可能性がある」(疾病予防コントロールセンターの曽光・元首席科学者)とされるほどに広がった。昨年末までに人口2500万人の上海で70%超、8300万人超が住む内陸部の四川省で63・5%との分析や調査結果がある。
香港大学公共衛生学院のベン…
- 【視点】
2020年にパンデミックが始まった頃は「集団免疫(Herd Immunity)」が話題になったが、その犠牲が大きすぎるということで、いずれの国も集団免疫戦略は取らなかった。しかし、致死性が低いとされるオミクロン株では集団免疫戦略を採ることは