第53回敵基地攻撃能力は「抑止力」となるのか 重なる真珠湾攻撃の際の論法
牧野愛博
岸田文雄首相は昨年12月16日の記者会見で、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有について「相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力となる」と説明しました。本当にそう言い切れるのでしょうか。田中宏巳・防衛大学校名誉教授は、岸田氏の論理に、約81年前の真珠湾攻撃の際に使われた論法がダブって見えると指摘します。
――真珠湾攻撃当時、連合艦隊の山本五十六司令長官は、開戦当初に米軍に大打撃を与え、戦局を有利に運ぶ必要があると唱えていました。
当時、日本軍の指導者が考えた勝利は、東南アジアか太平洋で連合軍または米軍を徹底的にたたけば、諦めて降伏するのではないかという完全な他力本願に基づいていました。全面戦争あるいは総力戦は、相手本土に攻め込み、全土を征服して生産活動や徴兵・訓練を止める戦いです。米国は開戦と同時に、この方向で準備を進めました。でも、日本には米本土に攻め込む意志も計画もありませんでした。
反撃能力についても同じこと…