第13回コロナで閉ざされかけた道 バイオリニストを救ったBE:FIRST
田中紳顕
「今日の練習は中止だ」
楽団のスタッフから呼び出された指揮者が顔色を変えて、スタジオに戻ってきた。説明はそれだけで、団員らはただ自宅待機を告げられ、困惑した表情を見せた。
2020年3月中旬。バイオリン奏者の浅野みけらさん(35)は、ベトナム・ハノイの「サンシンフォニーオーケストラ」に加入し、まだ3カ月だった。
突然の練習中止に、仲間と「経営難で減給されるんじゃないの」と冗談交じりに話しつつ、帰宅した。しかし、1週間後に届いた楽団からのメールに我が目を疑った。
「新型コロナウイルスの影響で、活動を1年半休止します」
コロナ禍で海外での活動の道を閉ざされ、苦悩した浅野さん。救いになったのは、オーディション番組で見た7人組ボーイズグループ「BE:FIRST」の姿でした。
挑戦し続けた海外楽団のオーディション
4歳でバイオリンを始め、地元仙台の高校を卒業後、06年から米国の大学や大学院で演奏を学んだ。14年に帰国したが、英語教室の講師なども経験した。音楽だけで生計を立てるのは難しかった。
16年に兵庫県内のオーケス…