国債の返済ルール見直し検討へ 防衛費の財源確保狙い、財務省は警戒

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西尾邦明
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 防衛費増額の財源確保をめぐり、自民党は近く政府の借金にあたる国債を安定的に返済するしくみである「60年償還ルール」を見直す議論を始める。制度の廃止や60年の延長が想定されるが、市場の信認に影響を与えかねない。財務省も財政規律が緩むことを警戒しており、国債残高が膨張する恐れもある。

 国債は10年などの満期が来ると、返済する必要があるが、一度に現金で償還することは難しい。このため、大部分は借換債と呼ばれる国債を出して借り換えた上で、毎年の現金償還を国債残高の約60分の1(1・6%)とするのが「60年償還ルール」だ。1966年度に建設国債の発行開始と同時に始まった日本の減債制度で、道路などの平均的な耐用年数から60年とした。戦後の日本の財政制度の根幹をなすルールだ。

 具体的には、国債整理基金特別会計で処理されており、国債残高の1・6%の額を一般会計から毎年繰り入れている。国債残高は1千兆円規模にふくらんでおり、2023年度当初予算案での国債償還費は16兆7561億円。歳出総額の約15%を占める。

 自民党内では、この16兆円超を「財源」として活用できるとの考えが浮上している。萩生田光一政調会長は昨年12月、「ルールを見直して、償還費で(防衛費の財源を)まかなうことも検討に値する」と発言。60年の期間延長などを特命委員会で議論する方針だ。世耕弘成参院幹事長も、同様の考えを示している。仮に20年間延長した場合、単純計算で防衛費増額の規模と同規模の4兆円の財源が確保できるという。

 このアイデアはもともと、自民党の中堅・若手でつくる「責任ある積極財政を推進する議員連盟」が10月に出した提言にあるものだ。60年償還ルールについて「世界で唯一日本だけが適用している」と指摘。一般会計には米国などのように利払い費のみを計上するように財政運営を改めるべきだと主張する。

 萩生田氏らが財源探しに躍起…

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    明石順平
    (弁護士・ブラック企業被害対策弁護団)
    2023年1月11日16時55分 投稿
    【解説】

    日本財政は「ポンジスキーム」という古典的な詐欺手法と全く同じことをしている。 これは、「何かを運用して得た利益を分配すると謳ってお金を集めるが、実際は運用などしておらず、単に出資者から集めたお金を配り直すだけ」という詐欺手法である。

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    前田直人
    (朝日新聞デジタル事業担当補佐)
    2023年1月11日14時13分 投稿
    【視点】

    国債頼みのチキンレース。財政規律をめぐる議論は、私が物心つくころから絶えずありました。あの手この手を使って、日銀が国債を事実上買い支えるという「悪知恵」とも言える工夫をこらして、何とかここまでしのいできたわけですが、いよいよ万策尽きてきたの

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