ウクライナ東部で今月1日、占領しているロシア軍の臨時兵舎が攻撃され、少なくとも89人のロシア兵が死亡しました。ウクライナ側は、ロシア軍の死者が約400人だったとしており、ロシア軍にとって過去最大級の犠牲だと伝えられています。
ロシア軍は、兵士が携帯電話を使い、ウクライナ軍に位置を特定されてミサイル攻撃を受けたとしています。1カ所に兵士を集中させているのに、携帯電話使用のリスクを周知徹底できなかったのはなぜなのか。携帯電話といった電子機器が、侵攻にどう利用されているのか。自衛隊の元海将補でサイバー防衛に詳しい佐々木孝博・広島大客員教授に聞きました。
――兵舎への攻撃のきっかけは携帯電話の位置情報と言われています。
本当に携帯電話が原因かは定かではありませんが、仮にそうだとしたら、2014年にロシアがクリミア半島を併合したときに、まさにロシアがとっていた戦法です。
軍では通常、暗号化された秘匿性の高い通信手段を使うわけですが、ロシアは当時その通信を遮断し、ウクライナ軍に携帯電話を使わせるように仕向けました。
そして、その携帯電話の通信を傍受し、ウクライナ兵に虚偽の内容のメッセージや音声データを送っておびき出すなどして、攪乱(かくらん)したのです。
しかし、昨年2月のウクライナへの侵攻では、立場が逆転している印象があります。
ロシアは侵攻当初、ウクライ…
- 【視点】
直接のきっかけが携帯電話だった可能性はあるでしょう。しかし本質的な問題は、ハイマースの射程内、それも弾薬庫に隣接する場所に600人とも言われる多人数の兵士を集めた判断のまずさにあると思います。 ロシア軍は規律を守らなかった兵士に責任転嫁し