91歳記者が地元・中野を歩き続ける理由 心に残る「ならでは」記事
滝沢貴大
涌井友子さんはいつも、青い杖をついて現場に向かう。月に一度ある区長会見では補聴器をつけ、愛用の鉛筆でメモを取る。サブカルの街、東京・中野。91歳の女性記者には、現役を続ける理由があった。
昨年10月末の木曜日。中野区役所7階の会見場に、涌井さんはいつものように腰を下ろした。「週刊とうきょう」の主幹兼記者だ。
会見する酒井直人区長(51)は、区職員時代から26年の付き合い。涌井さんにとって我が子より若い。区長は「生涯現役を体現されている。見習いたいです」と言う。
1974年創刊の「週刊とうきょう」は、週刊とうたうが発行は月2回、部数約3千部のローカル紙だ。全国紙が扱わないような地元の話題を追ってきた。
編集作業は娘の久美子さんの手を借りるが、取材は現役だ。区のイベントへ、少年野球の大会へ。4年前に足を骨折するまでは自転車を使ったが、いまは杖をつきつつ徒歩やバスで中野を回る。
印象に残っている取材がある…