宇治・ウトロ地区の模型作る 城陽高校美術部

小西良昭
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 在日コリアンが多く住む京都府宇治市のウトロ地区のジオラマ模型を、府立城陽高校(城陽市)の美術部員が作っている。3月に完成予定で、その後は地区の交流施設「ウトロ平和祈念館」で展示される。

 ウトロは戦時中、飛行場建設で集められた朝鮮人労働者の宿舎ができ、後に在日住民の集落になった。1980年代から地権者に土地明け渡しを迫られたが、2011年までに市民や韓国政府の支援で一部を買い、宇治市などが住民向けの公的住宅2期棟(12戸)を整備中だ。3月に完成予定で、入居済みの1期棟(40戸)と合わせて希望する全住民が入居し、町の整備はほぼ終わる。残る家屋は年内にも取り壊され、更地が増えていく。

 きっかけは、「更地になる前の町を模型で展示できないか」という、祈念館スタッフの思いだった。スタッフとボランティアでつながりのある城陽高校美術部に制作を打診したところ、快諾。昨秋から制作が始まった。

 模型は、115センチ×50センチで、縮尺約300分の1。同部の1年生10人が、2015年撮影の航空写真と韓国の学生が作った詳細図を参考に、週3時間ほど制作に取り組んでいる。地面や道は写真を下敷きにし、家屋は建築模型に使うスチレンボードで組み立てた。屋根の傾きなどを細かく再現しようと、修正を重ねている。

 昨年12月27日、1、2年生部員9人は祈念館を訪ね、地区を初めて歩いた。祈念館を設計し、この日案内した1級建築士、ムン青(チョン)ヒョンさん(51)は「(模型の制作で)若者と住民の交流のきっかけになる」と期待する。

 地区を歩いてアドバイスを受けた1年生の春名悠翔(ゆうと)さんは「屋根の傾き再現が難しい」、橋本大翼(だいすけ)さんは「昔の家に近づけて、住民に思い出してもらえれば」と話した。友野佐千子顧問(53)は「建築士と町を歩いて現場に触れ、かけがえのない経験になった」と振り返った。

 1級建築士で、祈念館の阿部ゑり事務局長(70)は「自分の家を模型で確かめて、住民が喜んでいる。更地になれば町並みが忘れられていく。高校生が模型で残してくれて、ありがたい」と語る。祈念館2階に展示する予定だ。(小西良昭)

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