キーウ市内に住むオレーナ・コワレンコさん(24)は戦場に行った父ワレリーさん(47)から届く、無事を知らせる携帯へのワンギリと一つだけの絵文字を毎日、心待ちにしていた。
ロシア軍が侵攻した昨年2月24日朝、母に「戦争が始まったわ」と起こされた。父は倉庫に軍服や装備品を取りに出て、既にいなかった。しばらくして戻ってきた父は軍服に着替えていた。
父の本業は建設関係だが、2014年から1年半、ウクライナ東部で親ロシア派との戦いに参加したことがあった。よくその時の話を聞いていた。「初めは戦場に行くのを躊躇(ちゅうちょ)した。3日間は怖くて仕方なかった。でも略奪や人々の苦しみを見るにつれ、家族だけでなく、他の人たちも守る義務感を感じてきた」と繰り返していた。
今回、父に迷いはなかった。父は、心配する自分に「今回の戦いに参加するのは戦場の経験がない人たちが多いだろう。自分は戦い方を知っている。経験を伝えなければ」と諭した。
ただ、普段は吸わないたばこを大量に買ってくるように言ってきた。
侵攻後、1カ月はキーウ市内や近郊に派遣された。
ロシアによるウクライナ侵攻から11カ月が経ってもなお、終わりが見えません。ウクライナ政府によると、この侵略によって、昨年12月時点で1万~1万3千人のウクライナ兵が命を落としたといいます。愛する人を戦地に送らざるを得なかった家族たち。夫や父、息子を失った遺族たちを訪ねて歩きました。
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そして、3月末から激戦地東…

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