「お願いだから戦場には行かないで欲しい」
ロシアの侵攻を受けたウクライナのキーウ近郊に住むイベント会社経営のレシア・マルチェンコさん(47)は夫のオレクサンドルさん(42)に懇願した。
ロシアがウクライナに侵攻した昨年2月24日のことだ。
夫は、東部での親ロシア派との戦いに参加し、2016年に左肩を撃たれ、障害が残っていた。8回も手術した左肩はほとんど動かない。自動小銃もまともには構えられない。「戦える体じゃない」と思った。
夫婦の夢だったイベント会社を前年に立ち上げたばかり。まだ幼い子供もいる。
知らぬ間に荷物をまとめていた夫は、自宅から8キロほど離れた志願兵の集合場所に車で送れ、と聞かない。「自分が行かなければ誰が行くんだ?」。「地元の人の訓練を手伝えばいいじゃない」。説得を続けた。「送ってくれないなら歩いていく」。車で送っていくほかなかった。
「健康診断で拒否されるだろう」。そう踏んだ。予想通り、肩のけがを理由にいったん入隊を拒まれた。
ロシアによるウクライナ侵攻から11カ月が経ってもなお、終わりが見えません。ウクライナ政府によると、この侵略によって、昨年12月時点で1万~1万3千人のウクライナ兵が命を落としたといいます。愛する人を戦地に送らざるを得なかった家族たち。夫や父、息子を失った遺族たちを訪ねて歩きました。
行方不明の夫 SNSでも情報は得られず
だが、夫は諦めなかった。バ…

ウクライナ情勢 最新ニュース
ロシアのウクライナ侵攻に関する最新のニュース、国際社会の動向、経済への影響などを、わかりやすくお伝えします。[もっと見る]