第13回ネット空間でロシアを「遮断」企業判断に委ねる危うさ 国際法の空白
編集委員・五十嵐大介=サンフランシスコ、同・須藤龍也
戦時のIT企業は、支援の形で国家に影響力を持つだけではなく、プラットフォームを通じて市民を巻き込む情報戦のカギも握る。
ロシアのウクライナ侵攻後、米大手SNSは「偽情報」の拡散防止などに追われた。ツイッターによると、侵攻直後のロシア国営メディアの投稿を共有するツイートは1日平均約2万件から約6万5千件に急増。ロシア側のプロパガンダが広まる可能性から、同社は1週間でその露出を約8割減らしたという。
【前回】ロシアの侵攻前日、マイクロソフトが察知した異変 サイバー戦最前線
ロシアがウクライナに侵攻した当初、マイクロソフト、アマゾン、メタなどの名だたるビッグテック企業がウクライナ政府と協力し、サイバー戦の「防御」を担いました。現在の戦争において、巨大IT企業の影響力は、どれほど大きいものなのでしょうか。
フェイスブック(FB)などを運営し、世界人口の半分に迫る約37億人の月間利用者を持つ米メタは、ウクライナ語やロシア語がわかるスタッフらの専門チームで対応。FBなどでロシア国営メディアへのアクセスなどを制限し、FBはロシア当局からアクセスを遮断された。世界最大の動画投稿サイト「ユーチューブ」はロシア国営メディアをブロックした。
「ロシアへのオープンな流れを維持する」と表明したIT大手も
情報の制限が民間企業の判断に委ねられる中、問われたのが各企業の「中立性」や「倫理基準」だ。
ロイター通信は2022年3…