調布陥没事故、次は住宅40軒解体へ 外環道工事「影響ない」はずが
最初に異変を感じたのは2020年9月のことだった。突然、自宅の棚に置いた食器が「チャリチャリ」と甲高い音で鳴り始めた。
娘は「パパ、大音響はやめて!」と叫んだ。夫の部屋にあるスピーカーが原因だと思ったからだ。
部屋に飛び込むと、夫はきょとんとしていた。音楽など流していなかった。
同じ頃、自宅そばの深さ約50メートルの地下で、巨大なシールドマシン(掘削機)がトンネルを掘っていた。しかし、この家に住む河村晴子さんは、そのことを知らなかった。東京外郭環状道路(外環道)のトンネル掘削工事だった。
サルスベリ、ハナミズキ、オリーブ……。窓から見える木々は季節ごとに趣を変え、スズメやシジュウカラなどの小鳥たちを招き入れてくれる。元高校教諭の河村さんは、慌ただしい日々に彩りをくれる、自宅の庭が大好きだった。
地下深くの工事は、要件を満たせば住民の同意は不要です。でも、陥没事故が起き、さらに近く、住宅40軒が解体される事態となってしまいました。経緯と見通しを紹介した記事です。
自宅から約400メートルのところにある京王線つつじケ丘駅は、新宿から電車で20分あまり。都心近くなのに水と緑が豊か。閑静な住宅街で河村さんは育った。60年近く前に移り住んだ両親は、この環境をとても気に入っていたという。
その両親が亡くなり、今から30年ほど前に家を建て直した。地震に負けないよう、地中約5メートルまで深く杭を打ち込んだ。「終(つい)のすみか」にするつもりだった。
子どもを育て上げ、ここ数年は仕事も一線から退いた。思い描いた静かな生活は突然、一変した。
20年9月に起きた自宅の異…
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