ヤボなことはせずすっきりと 伝統工芸展総裁賞作家が竹に込める思い

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編集委員・中村俊介
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 思わず両手で包み込みたくなる、そのやわらかな外見。見込みに浮かびあがるのは蓮華(れんげ)座だ。してみると、中を飾る花は仏の立ち姿か――。

 日本工芸会総裁賞を受賞した透網代花籠(すかしあじろはなかご)「朝露(あさつゆ)」は、静かなたたずまいのなかに敬虔(けいけん)さをしのばせている。

 網代の器胎が縦ひごを連ねた深いえんじの衣をまとい、二重の立体感を形作る。わずかにカーブする口縁に誘われて中をのぞき込み、じっと目をこらすと、そこには控えめに咲くハスの花弁が。それを“発見”したときの見る者の驚きはいかほどだろう。この意外性が受賞をたぐり寄せたのも想像に難くない。

 漆黒の竹にときおりきらめく光の粒が作品名の由来。かつて名だたる書家は、葉にたまった朝露を集め、それで墨をすったという。「黒地にキラッとした輝きがそれに見えてね」。竹工作家、河野祥篁(かわのしょうこう)さん(65)=大分市=は、そう語った。

 基本に忠実、新しいことはしていない。しなやかな竹という素材は、やろうと思えばいくらでも複雑にできる。

 けれど、「シンプル・イズ・ベスト。ヤボなことはせず、すっきりやる。余白を生かす、というのかな。それが僕のやり方」だそうだ。

記事後半では2月1日~6日に福岡市で開かれる第69回日本伝統工芸展についてお知らせします。

 本当は彫刻家になりたかった…

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