第15回戦時のIT企業「防御」は「攻撃」に変わるか 米NSA元局長に聞く

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聞き手・五十嵐大介
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 ウクライナ侵攻では、ロシア政府に関連するとみられるサイバー攻撃からウクライナ政府を守るため、米国の巨大IT企業が重要な役割を果たした。なぜいま、官民の連携が強まっているのか。オバマ、トランプ両政権下で米国家安全保障局(NSA)の局長をつとめたマイケル・ロジャーズ氏に聞いた。

――ウクライナへのロシアのサイバー攻撃の状況をどうみますか?

 ロシアは2014年にクリミア半島に軍を送った時、西側諸国に対抗するためにサイバーをツールとして使っていた。もし西側がロシアに強い対応をとれば、「我々も強い対応をとる」というシグナルを送ろうとしていた。サイバーはそのためのツールの一つだった。

 2022年のウクライナ侵攻では、ロシアは8年前よりさらに強力な世界からの批判や制裁を受けている。この状況で、ロシアは欧米や北大西洋条約機構(NATO)など西側との対立を広げたくないと考え、サイバー面では著しい措置をとらずに慎重なアプローチをしていた。一方で、ウクライナのインフラに対するサイバー攻撃は極めて多く、プロパガンダの拡散など偽情報工作にも力を入れてきた。

 つまり、ロシアはサイバー攻撃をしていないわけではなく、違う手法を使っている。ネットワークの破壊などはウクライナのみに絞り、世界の他の地域では偽情報やプロパガンダ工作に注力している。ハッキングなど強力なサイバー攻撃を西側諸国にも広げれば、西側がより攻撃的になると懸念しているのだろう。

2022年は「様子見はできない状況だった」

――サイバー空間での米IT大手の役割をどうみますか

 14年の時には、民間企業は…

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