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第1回ワンオペで4人子育ての孤立 安らぎの朝ビールが依存につながるまで

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浅野真
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A-stories「依存症 女性とアルコール」

 お酒が毎日必要になったのは、いつのことだったろう。

 きっかけは覚えている。

 確か、40歳ぐらいのころ。中学生を頭に、育ち盛りの4人の子どもが反抗期を迎えていた。

 早朝のジョギングで一汗かいた後、お酒の自販機が目に入った。少しためらったが、缶ビールのボタンを押した。

 乾いたのどに染みいるようにビールが入っていった。

 「きょうは育児も家事もがんばれそうだ」。そんな気持ちになった。

 もともと夕食時に軽くビールを飲む程度だったのが、日中も酒が手放せなくなる状態になるまで時間はかからなかった。

無関心な夫、荒れる子ども

 女性(57)が結婚したのは、20代半ば。翌年第1子を出産、30代半ばまでに、さらに3人の子どもが生まれた。

 専業主婦として家事、育児の毎日。夫は「家のことはおまえがやってくれ」とほとんど関わらなかった。子どもが小さいころは、子煩悩だったと思う。

 子どもが思春期を迎え、反抗的になった。困難なこと、つらいことがいろいろ出てきた。それでも1人で4人の子どもと向き合い続けた。

 長男が中学生になったころ、女性の話に耳を貸さなくなり、時折暴力をふるうようになった。食器を割られたり、暴言を吐かれたりした。

 「自分でなんとかしろ」。夫は取り合わなかった。

 子どもにかかりっきりになればなるほど、夫との会話もなくなっていった。

 「お母さんの愚痴は聞きたくない」。中学生だった長女にも言われた。

 友人や知人にも相談できない。完全に孤立した、と思った。つらかった。

 長男が荒れ始めたのは自分のせいだ。自らを責めた。一方、なんで私だけ、子どもから暴言を吐かれるのか。そんな気持ちがない交ぜになった。

 そんな女性にとって、朝のジョギングは家の外で1人でいられる、心安らぐ時間だった。そこに、巧みに入り込んできたのがアルコールだった。

 さすがに朝からコンビニでビールを買うのは、ためらいがあった。自販機で買い、公園でレジ袋で隠すようにして飲んだ。

 「効果」は大きかった。すさんだ気分やつらい気持ちが消えた。

せり上がる不安 なくすには

 しかし、缶ビールひとつの「効果」は昼前にはなくなった。

 家に帰れば、また1人で子ど…

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