• アピタル

番組で乳がん判明「すべてオープンに」ヒーロー・麻倉未稀さんの決意

聞き手・上野創
[PR]

 デビュー40周年を迎えた歌手の麻倉未稀(みき)さん(62)。50代半ばで乳がんを経験し、自身のヒット曲「ヒーロー」に励まされてきたと言います。地元の神奈川県藤沢市で、啓発や患者支援の活動を広げようとしている麻倉さんに話を聞きました。

乳房を切除 「もっと遅かったら…」

 テレビ番組の企画で6年前に人間ドックを受け、乳がんが見つかりました。自宅に近い病院を紹介していただいたので、そこで乳房の切除と再建の手術を受け、その後もホルモン治療薬を飲み続けています。

 都内の大学病院で詳しい検査結果を聞いた後、考えたのは病気の公表のこと。仕事が減るリスクはある。でも「ヒーロー」を歌い、「励まされる」「元気が出た」という言葉を受け取ってきた私が隠すわけにはいかない。自宅に戻る東海道線で頭をフル回転させ、藤沢駅で降りるときには「先のことは分からないけれどすべてオープンにしよう」と心を決めていました。

 実は胸に違和感があったのですが「大丈夫だろう」と流していました。仕事や父の入院などで忙しく、人間ドックは先延ばし。検査が怖い気持ちもあった。反省し、後悔もしました。医師は「もう少し早くきていたら、こんなに大きく取らなくてよかった」。でも「もっと遅かったら……」という話もあり、あのときドックを受けて本当に良かったと思います。

 あのころ、パソコンで検索しても、どれが正しい情報なのか分からなかった。がんを学ぶ機会がもっと必要だなと思いました。

地元・藤沢でがん啓発活動

 「体験を話して」と頼まれたとき、「子育て中の女性など、高齢でない人、がんになっていない人も来ないと啓発にはならないな」と感じました。市役所の人と話したら、ピンクリボン月間に市民祭りがあるから「何か企画を提案してみませんか」と打診されました。2018年に「ピンクリボンふじさわ」を作り、歌と講演がセットの啓発の催しをしました。手術の翌年のことです。

 コロナの中、検診をためらう人のことが心配です。怖くても調べることは大事。少しでも背中を押して、地元の検診率を上げられたらと思っています。

 啓発のほかに、患者や家族がちょっと話せる場も作ろうと動いています。私は手術の前も後も、がん患者や家族を受け入れる「マギーズ東京」で話を聞いてもらって心が落ち着きました。入院中の父のことも相談できた。病院とも家とも違う「精神安定剤」みたいな場所、一緒にお茶を飲むだけでもいいという空間が、藤沢にもほしい。

 そこで、開業医の先生や看護師さん、患者経験者の協力もいただき、「ピンクリボンふじさわ」を発展させ、乳がんに限らない活動のNPO法人「あいおぷらす」を作りました。既存の「ガーゼ帽子を縫う会」もその一事業となり、脱毛時にかぶる帽子をおしゃべりを楽しみながら作っています。

 春ごろから月1回、場所を借りて誰でも参加できる集まりを開こうとメンバーで計画を進めています。マギーズのような建物はすぐにはつくれないけれど、いずれは藤沢に拠点ができたらいいな。

 自分で気付かなくても、心は影響を受けます。実は手術から2年ほどたったとき、涙がとめどなく出る経験をしました。がんの手術、父の死といろいろあったけど、仕事もあり気を張っていた。近づいていたデビュー40周年を目標に気持ちを立て直すことができました。昨年、無事に記念のアルバム制作やライブが実現できました。

 術後5年を超え、行動範囲を広げたいと思っています。例えば、みんなで歌ったり声を出したりする企画とか。体全体を開いて声を出すと気分も変わるし、体にも良いはず。歌なら私も教えられます。

 キャンサーギフトという言葉があるけれど、病気があったから、歌手としてどう生きていくかという原点に立ち戻れた。今後も、人と自分を励ましながら「ヒーロー」を歌い続けていきます。(聞き手・上野創)

ネクストリボン2023」でオンライントーク

 麻倉さんは、世界対がんデーの2月4日に朝日新聞社と日本対がん協会が共催するイベント「ネクストリボン2023」に登壇します。オンラインで自らの経験やその後の活動などについて語ります。午後2時から。参加無料。詳細・申し込みは公式サイト(https://t.asahi.com/n23b4別ウインドウで開きます)から。問い合わせは事務局(03・5565・4685、平日午前10時~午後5時)へ。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

がんとともに

がんとともに

がんになっても、安心して働き、暮らせる社会に。がん検診を受けるのが当たり前の社会に。[もっと見る]