ウクライナへの軍事支援をめぐって、欧州で戦車供与に向けた動きが強まっている。ロシアによる侵攻直後は、交戦国とみなされないよう慎重だったが、フランスを皮切りにドイツと米国は軽戦車や歩兵戦闘車の提供を決定。今はドイツ製戦車「レオパルト2」の提供が焦点になっている。欧米がいま軍事支援を強めるのはなぜなのか。フランスの防衛企業ネクスターの元エンジニアで軍事コンサルタントのマルク・シャシヤン氏に聞いた。
記事のポイント
①欧州は当初、ロシアに交戦国とみなされるのを避けていた。ロシアの「苦戦」が認識を変えた②「停戦交渉」をにらんだ動きも背景に③戦車提供には課題あり
――フランスは1月4日、ウクライナへの軽戦車の提供を発表し、ドイツと米国も歩兵戦闘車を支援すると決めました。
侵攻が1年近く続くなかで、これまでの欧米各国の支援には三つの局面がありました。第1段階は、歩兵を運ぶためのトラックや医薬品などの提供で、ほとんど攻撃力のない物資が中心でした。
第2段階では地対空ミサイルなど地上戦の主力となる兵器の支援に踏み切りました。フランスは昨年4月から断続的に、自国製の自走榴弾(りゅうだん)砲カエサルをウクライナに提供しています。最大射程40キロ超の155ミリ榴弾砲が6輪トラックの車台に据え付けられており、精度の高さで知られる兵器です。
米国も前線から離れた弾薬庫や司令拠点を破壊できる高機動ロケット砲「ハイマース」を供与しています。
フランスの軽戦車や米独の歩兵戦闘車の提供は一連の支援の中で3番目の局面に当たります。この第3局面は、ウクライナのゼレンスキー大統領の訪米に合わせて米国が決めた地対空ミサイル「パトリオット」の提供から始まったと考えています。
米国の決定をきっかけに、フランスが軽戦車「AMX―10 RC」の提供を決め、ドイツも歩兵戦闘車「マルダー」で続きました。
――欧米がより強力な軍事支援に踏み切った背景には何がありますか。
ロシアによる侵攻が始まった…
- 【視点】
記事中でも指摘されているように、戦車も歩兵戦闘車もまとまった数がなければ戦局を動かす決定的な力とはなり得ないと思います。特に戦車は今のところ英国がチャレンジャー2を14両供与すると言っているだけですから、「レッドライン」を超えてみせるという

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