東京湾にトド?専門家「聞いたことがない」 弱って群れとはぐれたか
羽田空港近くの東京湾で15日、「トド」とみられる生物が目撃された。専門家によると、東京湾での目撃は非常に珍しいという。なぜ、この場にいたのだろうか?
「茶色い何かがいる」
友人とボートで沖釣りをしていた東京都北区の男性会社員(54)が、トドのような生物を見つけたのは15日昼ごろ。羽田空港近くの岸壁に寝そべっていた。
男性はダイビングや釣りなどをよくしている。これまでに見たことがない生物との遭遇に驚き、あわてて友人に声をかけた。
「なんだろう? オットセイ?」
みんなで話しながら見守った。だが、茶色の生物は、寝そべったまま動かない。鳴いてもいない。「死んでいるように思った」
しばらくすると、頭を動かし、顔をそむけるようなしぐさを見せた。男性は「そっとしておいてって感じで、元気のない様子だった」と振り返る。
その後、ゴロンゴロンと寝転がりながら、岸から海に降りたという。「死んじゃいそうだったから、大丈夫かなと。友人は、ちゃんと泳いでいたと言っていましたが……」
オットセイに似るが「毛も足も短い」
千葉県鴨川市の「鴨川シーワールド」の飼育員・加納幸司さん(39)に、男性と一緒にいた友人が撮影した映像を見てもらった。この生物は「オットセイ」ではなく、「トド」の可能性が高いという。同館ではトドも飼育している。
トドはアシカの仲間で最も体が大きい。体重はオスで1トン、メスも250キロ近くになるという。
トドとオットセイは似ているが、映像の生物はオットセイにしては、毛が短く、前脚と後ろ脚が短い。大きさからも「トドのメス」とほぼ断定できるという。
なぜ東京湾にいたのか。
トドは、春夏はオホーツク海とベーリング海で過ごし、11月~5月にかけて、エサの魚やイカを求めて北海道に南下してくる。
「トドは群れで過ごす。体調が悪かったからか、群れについていけなくなり、さまよっている間に、南下する潮の流れに乗ってしまったのではないか」と加納さん。
2014年には、トドのメスが千葉県の外房で発見され、鴨川シーワールドで保護された。
「海で泳げる余力はある」
「南下するのは弱った個体の可能性が高く、多くは人に発見される前に死んでしまう。関東で見つかるのは珍しいが、東京湾で発見されたのはさらに珍しい」
目撃した男性によると、東京湾で発見された生物は、転がるように海に戻ったという。加納さんは、「本当に弱っていたら海に入らない。海で泳げる余力があるのだろう。心配ではあるが、がんばってほしい」
北海道では漁師の網を食い破ることなどから、トドは「海のギャング」とも呼ばれている。漁業被害防止と保護の共存を考えながら、毎年個体数を決めて捕獲しているという。
淀ちゃん、ナカちゃん、タマちゃん…… 過去にも続々
■過去に川などに迷い込んだク…