私たちはなぜ遭難したか 仲間のいのち奪った冬山、小さな「予定外」

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大下美倫
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 兵庫、鳥取県境にある氷ノ山(ひょうのせん)(標高1510メートル)で2021年末、車で入山した男性グループ5人が遭難し、1人が死亡した事故があった。生還した男性(71)がこのほど、朝日新聞の単独取材に応じた。事故から1年。あのとき何が起きていたか。遭難は避けられなかったのか。

 ガサガサッ――。

 21年12月26日午前5時。大きな音がして目が覚めた。テントの上に張った雨よけのシートに雪が積もり、重みで流れ落ちたようだった。

 前日、30~70代の5人で4台の四輪駆動車に分乗し、兵庫県宍粟市の登山口から氷ノ山に入山した。

 山登りではなく、車で移動してテントで1泊する、雪山キャンプ。このメンバーでは数年前からの恒例行事だった。

 登山口から約8キロ、標高1千メートルほどの地点。みんなでバーベキューを楽しみ、男性が自分のテントに入ったのは午後11時ごろだった。この時点ではまだ、積雪はあったが雪はそれほど降っていない。

 それが一夜で豹変(ひょうへん)した。

メンバーは雪山に慣れていたのに、なぜ極限の状態に追い込まれたのか。貴重な証言から、遭難の恐ろしさと備えを考えます。

1人で夜を明かした「先生」

 外に出ると、テントの脇のタープ(布製の屋根)が雪の重みで倒れ、4本の脚が折れていた。

 雪山キャンプ歴は30年以上あったが、初めての経験だった。

 「やばい」

 他の4人をたたき起こした…

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